日々の診療

心雑音がある、と言われたら

こんにちは、横浜市旭区善部町あらた動物病院、獣医師の小林紗織です。
今回は心雑音についてのお話をしたいと思います。

高齢になってくると心雑音の指摘を受けるわんちゃんも増えてくると思います。
一般的に多いのは「僧帽弁閉鎖不全症(弁膜症の一種)」と言い、心臓の左のお部屋を隔てて血液を送っている弁(僧帽弁)の閉じが悪くなり、それに伴って血液が逆流する音が心雑音として聴取されます。
しかし、聴診で心雑音がある=僧帽弁閉鎖不全症なので薬を始めましょう!というのは本当に正しいのでしょうか?


心臓は収縮と拡張を繰り返していて、どのタイミングで雑音が聴取されるかによって大まかに分類されます。
(さらには音の大きさ、リズムなどでも分類されますが、複雑な話になってしまうためここでは割愛します)


心雑音の種類
➀収縮期雑音
僧帽弁閉鎖不全症、三尖弁閉鎖不全症、大動脈狭窄症など
➁拡張期雑音
大動脈弁逆流症、肺動脈弁逆流症など
わんちゃん、ねこちゃんではほとんどありません
➂連続性雑音
動脈管開存症(先天性疾患です)など

以上のように、「心雑音」といっても様々な病気の可能性が潜んでおり、また、心雑音の大きさだけでは病態の重症度もわかりません。雑音の音が大きいからと言って必ずしも重症とは言えませんし、その逆も言えます。
そこで診断に役立つのがレントゲン検査超音波検査になります。

まず、レントゲン検査では心臓の大きさや形、肺の状態などが確認できます。

赤く囲っているところが肺です。レントゲンは空気が黒く、液体は白くうつるので、肺は通常黒く抜けますが、この症例は後葉が肺水腫のため白くなっているのがわかると思います。

超音波検査では、心臓内部(心室や心房など)の形態、心筋の厚さ、血液の逆流量、弁の形態、心臓の動き方など、たくさんの情報を知ることができます。

黄色いモザイク信号が血液が逆流しているサインです
僧帽弁逆流速度を計測しているところです。重症度の評価に役立ちます。


画像診断により、心臓の状態を正しく把握することができ、本当に薬が必要な病態なのか、必要な場合はどんな薬がどれだけ必要なのかを判断することができます。
また、定期的に検査することにより、進行具合も確認することができます。

心雑音を指摘され、画像検査をされていない方はお気軽にご相談いただければと思います。

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