症例紹介

症例紹介:鼠径ヘルニア

こんにちは。横浜市旭区善部町のあらた動物病院 院長の小林 新です。

今回は、鼠径ヘルニアのチワワちゃんのお話をしたいと思います。

鼠径ヘルニアは、足の付け根(鼠径部)にある隙間から、お腹の臓器が飛び出してしまった状態です。

臓器が出てくると、やわらかいしこりのような触り心地で、押すとお腹の中に臓器がもどって触れなくなってしまうことが多いです。しかし、すぐにまた臓器が出てきて、膨らんできます。

脂肪が出てくることが多いのですが、隙間が大きいと腸や膀胱、女の子の場合は子宮などが出てくることがあり、さまざまなトラブルが起こってしまうので、隙間の大きなものに関しては手術して隙間を塞いだ方がよいと言われています。

両方のおっぱいが膨らんでいるように見えますが、両側性の鼠径ヘルニアでした。

青の点線が腹筋のラインです。青のラインと赤の矢印の間の黄色い部分が鼠径ヘルニアの領域です。ヘルニアの内部には小腸が入っており、黒い細長い領域は小腸のガス陰影です。

このように、小腸がヘルニアの中に入ってしまうと、大量に腸が出た際、お腹の中に腸が戻せなくなることがあり(嵌頓ヘルニア)、虚血や壊死を起こし、腸に穴が開いてしまうことがあります。

今回は、小腸をお腹の中に戻して、再び出てこないように足の間にある大きな隙間を縫い縮める手術をすることになりました(鼠径ヘルニア整復術)。

鼠径ヘルニアには、先天的なものと後天的なものがあり、この子は保護犬だったのでどちらのタイプなのかはわからないとのことでした。後天的なものは、性ホルモンとの関連が示唆されており、発情中や妊娠中に発生しやすいと言われています。この子は未避妊であったので、同時に避妊手術も実施することになりました。

黄色がヘルニア、青色が足の付け根の隙間(鼠経輪)、緑が避妊手術の切開部位です。

正中の腹筋を切って、避妊手術を実施しました。黄色は左側の鼠径ヘルニアです。中には、小腸と脂肪が大量に入りこんでいました。

ヘルニアの中身をお腹に戻しました。
足の間にある大きな隙間を、丈夫な非吸収糸で縫い縮めました。

左右の鼠径ヘルニアをどちらも、整復しました。

術前に膨らんでいた部分が術後の画像ではなくなりました。

手術から、半年以上がたちましたが明らかな再発は認められません。見た目もすっきりして飼い主様にも大変喜んでいただけて良かったです。

鼠径ヘルニアは小さい場合は無症状のことも多いですが、その程度により手術を検討する必要もある病気です。お悩みの方は、是非ご相談ください。

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