症例紹介

症例紹介:猫伝染性腹膜炎(FIP)

こんにちは。横浜市旭区善部町あらた動物病院 院長の小林 新です。今回は、猫ちゃんのコロナウイルス感染症である猫伝染性腹膜炎(FIP)に関してお話しをしていきたいと思います。

猫伝染性腹膜炎(FIP)は、コロナウイルスの1種である猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)により発症する、致死的な感染症です。もともと、体内の腸コロナウイルス(FCoV)が強毒株である猫伝染性腹膜炎ウイルスに変異することにより発症すると言われています。

胸水や腹水がたまってくる ウエットタイプ と肉芽腫などを形成する ドライタイプ があり、どちらも混在して発症する症例もいます。症状は、元気・食欲の低下や持続的な発熱、腹水貯留、眼の炎症、神経症状、呼吸困難、黄疸など様々です。

私が獣医さんになりたての10年前は、有効な治療法がなく不治の病でした。飼い始めたばかりの子猫や若い猫ちゃんが発症することが多く、診断できても、有効な治療法がなく、治療することができればと非常につらく、悔しい思いをすることが多い病気でした。

数年前から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行などのさまざまな経緯で猫ちゃんでも治療薬が使えるようになり、根治治療ができるようになってきました。

今回は、元気がないとの主訴で来院されたラグドールの子猫さんのお話をしたいと思います。

持続性の発熱があり、非常に痩せていました。全身の精査を実施したところ、軽度の腹水貯留と腹腔内リンパ節の腫大、両側の腎臓の腫大、黄疸が認められました。

超音波画像です。臓器の間の黒い領域が腹水です。

腹水を抜去しPCR検査を実施したところ猫腸コロナウイルス(FCoV)と猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)が陽性でした。

FIPと診断し、投薬治療を開始しました。

治療反応はよく腹水は無くなり、体重も増加し、元気も戻りました。休薬後に再発してしまったものの、投与量の増量で完治してくれました。先日、無事に去勢手術を実施することができました。本当に元気になってくれて良かったです。

猫伝染性腹膜炎(FIP)は子猫の時期に起こる非常にこわい病気です。治療法は治療薬により可能になってきましたが、治療が遅れてしまうと死に至ってしまう非常にこわい病気です。子猫ちゃんの体調で気になることがありましたら早めの受診をお勧めいたします。

猫伝染性腹膜炎(FIP)でお悩みの方がいらっしゃいましたら、是非一度ご相談ください。

関連記事