症例紹介

症例紹介:猫の乳腺腫瘍

こんにちは。横浜市旭区善部町のあらた動物病院 院長の小林 新です。

今回は、乳腺腫瘍ができてしまった、14歳の猫ちゃんのお話をしたいと思います。

乳腺にしこりができており、舐めてしまって痛そう。少し、膿っぽい臭いもするということでした。2つのしこりがくっついており、大きさは2㎝×3㎝×1㎝、表面が自壊し、化膿していました。他にも、鼠径リンパ節の腫れが認められました。

猫の乳腺腫瘍の約80%は乳がんと言われており、初期でもリンパ節への転移率が高いと言われています。乳がんの可能性を考え、しこりとリンパ節の針生検を実施しました。

細胞診でも乳がんの可能性が高いと判断し、鼠径リンパ節への転移もありそうでした。

今回は、しこりが片方に限局していたので、オーナー様と相談し、リンパ節も含めて片側乳腺切除を実施することになりました。

猫ちゃんは甲状腺機能亢進症も患っていたため非常に痩せていました。高齢で、手術や麻酔に耐えられるか心配でしたが、無事手術を終えることができました。

病理検査結果は以下の通りで、術前で転移の疑いがあった鼠径リンパ節の他にも腋窩リンパ節の転移が認められるとのことでした。

術後の経過は良好で、甲状腺の治療で少し体重も増えてきました。元気な姿で抜糸に来てくれた時は本当に嬉しかったです。

リンパ節への転移がありましたので、術後の抗がん剤に関しても相談させていただきましたが、希望されなかったので、今後は注意深く経過観察をしていきたいと思います。

猫の乳腺はリンパ管ですべて繋がっています。そのため、腫瘍がある部分のみをとる局所摘出では乳腺が残ってしまうので再発しやすいと言われています。再発すると、今回のように表面が自壊し、感染を起こし、臭いがでて、その部位を猫ちゃんが気にして舐めてしまい、痛みを伴います。

腫瘍の発生母地を取り去ることが重要で、乳腺の片側、もしくは両側をすべて切除する手術が再発防止のために有効だとわかっています。

しこりの部分だけをとってあげた方(局所摘出術)が体の負担も少なく、ねこちゃんには優しい気がしてしまいます。しかし、この方法では、根治が望めませんし、乳腺への再発を予防することもできないので、片側もしくは両側の乳腺全摘出術が結果的には猫ちゃんにとって優しい方法であると考えています。

当院は、JVCOG(一般社団法人日本獣医がん臨床研究グループ)が主催する乳がんで苦しむ猫をねこをゼロにする、『キャットリボン運動』の提携病院です。この一員として、少しでも乳がんで苦しむ猫ちゃんを減らしていきたいです。

キャットリボン運動に関しては、長くなりますので別の記事で紹介したいと思います。

猫ちゃんの乳腺腫瘍でお困りの方がいましたらいつでもご相談ください。

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