症例紹介

症例紹介:猫の口腔内扁平上皮癌

こんにちは。横浜市旭区善部町のあらた動物病院 院長の小林 新です。
今回はお口の中に腫瘍ができてしまった猫ちゃんについて紹介させていただきます。

症例は9歳齢、去勢雄の日本猫ちゃんです。

他院で生検を実施し、口腔内扁平上皮癌と診断されたとのことでした。そこではあまりできる事はないとのことで、緩和治療の希望で当院に来院されました。

口腔内扁平上皮癌は猫の口腔内腫瘍で一番発生率が高い腫瘍です。口の中に潰瘍を生じたり、腫瘍の周りの骨が溶けてくることがあるので、口の痛みを伴い、だんだん食べることが難しくなってくる腫瘍です。

左の下顎の腫れが認められました。

レントゲンでも骨の一部が溶けていました。

食欲はあるが、食べる途中で痛がりそれ以上食べない。日中も突然痛がることがあり、じっとうずくまっている。とのことでした。

何とか痛みだけでも取ってあげたいと希望されましたので、疼痛管理を主体に緩和治療を実施していくことになりました。

口の痛みがあるので、錠剤の投薬は難しく、液剤の飲み薬も試しましたが難しいとのことでした。

そこで、フェンタニルパッチというシールタイプの外用薬の痛み止めを使うことになりました。こちらのお薬は、定期的に貼る替えるタイプのお薬で、貼ってから3-4日間効果が持続します。モルヒネの仲間で、鎮痛効果も強く、手術の術後管理で使うこともよくあります。

このお薬であれば、口が痛いこの子が無理にお薬をのむ必要がありません。飼い主様と猫ちゃんの両方のストレスが少なく、今回の治療には最適と考え治療を開始しました。

首の後ろを少し毛刈りさせていただきました。そこに、薬を貼っていきます。

その上から、テープで抑えてあげれば、ほとんど剥がれてしまうこともありません。

最近は、痛み止めの反応もよく、ごはんが食べられるようになりました。

治療をはじめてからは以前の調子が戻ってきているとのことで、飼い主様がくださったお写真です。とても、調子が良さそうで、がんの治療中には見えないと喜んでいただけました。

緩和治療では、その子に残された時間をいかに良い状態でおくらせてあげるかが重要です。この子も最後のその時まで、できることを全力でしていきたいと思っています。

腫瘍の治療や口腔内扁平上皮癌でお困りの方がいましたら、一度ご相談ください。

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