こんにちは。横浜市旭区善部町のあらた動物病院、獣医師の小林紗織です。
わんちゃんを飼われている方のほとんどは「フィラリア症」という病気をご存じだと思います。
毎年暖かくなってきて蚊が出始めてから予防を始めて、蚊がいなくなるまで毎月予防薬を飲ませるというのが一般的だと思います。
でも、なぜ毎月予防薬を飲ませるのか?なぜ飲ませる前に検査が必要なのか?なぜ蚊がいなくなる12月まで予防薬を飲ませないといけないのか?
疑問に思われたことがある方も多いと思います。
今回はそんなフィラリア症について、また予防への理解を深めていただくためにお話ししたいと思います。
『フィラリア症ってどんな病気?』
犬糸状虫という寄生虫が蚊を媒介して犬の体内に入り、心臓に寄生することにより起こります。
血液の循環などに悪影響が出て、やがて体中の様々な臓器に障害をきたし、放置すると死に至る場合もあります。
『どうやって感染するの?』
参考書籍:犬・猫・エキゾチックペットの寄生虫ビジュアルガイド(インターズー)
『どんな症状?』
軽症
・心雑音が聞こえる
・食欲不振、散歩を嫌がる
・呼吸が速い
・咳をする
重症
・腹水がたまる
・重度の貧血
・血尿が出る
・ほとんど動こうとしない
感染してもすぐに症状があらわれるわけではないので、気づいた時にはすでに重症であることが少なくありません。
『治療法は?』
内科治療
・寄生数が多い場合は死滅虫体による急激な血行動態の変化に生体が耐えられず、亡くなってしまうことも。
外科治療
・血管の中に細長いカテーテルを入れ、右心系(右心房、右心室、肺動脈)から犬糸状虫をつり出して摘出する。
・特殊な設備等が必要なため、行える施設が少ないのが実情。
どちらも治療には大きなリスクが伴います。
『予防法は?』
予防薬を定期的に飲むことで予防できます。蚊取り線香や蚊よけなどでは不確実ですので、必ず予防薬を飲ませるようにしましょう。また、きちんと予防することによって他のわんちゃんへの感染も防ぐことにつながります。
『そもそもフィラリア予防薬って?』
フィラリア予防薬はフィラリアに感染するのを防ぐお薬ではなく、万が一、感染してしまった後に駆虫するお薬です。そのため、蚊が出始めてから1ヵ月以内に予防薬を飲ませ始め、12月に蚊がいなくなってからもしっかり飲ませることが大切になります。
お薬の効果があるのが第三期幼虫から第五期幼虫に対してなので、感染してから約15日~60日の期間になります。
→毎月予防薬を飲ませる理由です。
『いつからいつまで予防すればよいの?』
基本的には蚊が出始めてから1か月以内に飲ませ始めて、最後の投薬後に蚊を見なければ終了になります。
横浜市旭区にある当院では5月から12月までの予防をおすすめします。
『予防を始める前に』
万が一、フィラリアに感染している状態で予防薬を使用すると、ショック反応を起こしてしまう可能性があります。去年のお薬が残っているからと自己判断で予防薬を開始せず、必ずフィラリア検査をしてから飲ませるようにしましょう。フィラリア検査は採血をして、検査キットで5分ほどで結果が出ます。
いかがでしたでしょうか?
おそらくここまできちんとフィラリア症について認識して、毎年予防されている方は少ないと思います。
フィラリア症は感染してしまうと恐ろしい病気ですが、毎月予防薬を飲ませるだけで発症を防ぐことができる病気でもあります。
この記事が少しでも予防に関してお役に立てたなら幸いです。