症例紹介

症例紹介:虹彩メラノーマ

こんにちは。横浜市旭区善部町のあらた動物病院 院長の小林 新です。

左右で目の色が違う猫ちゃんのお話をしたいと思います。

右眼が黒い

症例は、6歳の日本猫の女の子です。3日前から食欲がほとんどなくなり、元気もないとのことでした。また、顔の右側が何となく腫れてきた気がするとのことでした。

右眼が反対と比べて少し大きく、触診での眼圧も高そうでした。眼圧計で眼圧を測定したところ、高眼圧になっており緑内障と診断しました。他にも検査を実施しましたが右眼以外に悪いところは見つからず、今回の症状の原因は緑内障による痛みであると考えました。

猫で緑内障は比較的珍しい病気です。緑内障の発症には、原因となっている病気が隠れている場合が多く、感染症などの炎症や眼内腫瘍などがあげられます。

この子は、2年半前から右眼だけが黒くなりはじめ徐々に黒さが増してきているとの話がありましたので、眼の虹彩にできるメラノーマ(悪性黒色腫)という腫瘍を疑いました。

瞳を縁取っている虹彩が全体的に黒く変化しています。

ただ、虹彩メラノーマである確定診断は眼球摘出を実施しないとできません。眼球摘出は、この子の人生を考えた時に非常に大きな決断です。このように、腫瘍の摘出により見た目の変化や大きな機能欠損を伴う場合の外科は腫瘍の一部をとる生検を実施し、確定診断をつけてから実施する場合がほとんどですが、眼は一部だけをとってくるということができないため、オーナー様と相談を重ね、手術を実施することになりました。
そして手術から約1週間後、病理検査の結果、やはり疑っていたびまん性虹彩メラノーマとの診断でした。

猫の眼の腫瘍としてメラノーマは虹彩に発生し、びまん性に拡大していきます。一般的に、進行が遅い腫瘍ですが、徐々に悪性転換します。初期では、眼が黒くなる変化のみですが、進行すると緑内障を引き起こします。早い段階で眼球摘出を行えば予後は良好ですが、病期が進んだ段階では、リンパ節、脾臓、肺、肝臓、腎臓などに転移する危険性が高くなります。

今回の症例は、若かったこと、視力がまだ残っていたこと、確定診断が事前にできないことなどで眼球摘出に進むかオーナー様とさんざん悩みましたが、悪性腫瘍でしたので切除することができて良かったです。

術後1ヵ月に転移のチェックで来院してくれました。明らかな転移は無く、今では元気食欲もすっかりもどり、術部の毛も生えてきていました。

今後は、局所再発やリンパ節・遠隔への転移に注意し、経過観察していこうと考えております。

おうちの猫ちゃんの目が黒くなってきた際には一度ご相談いただければと思います。

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