症例紹介

症例紹介:免疫介在性血小板減少症(IMTP)

こんにちは。横浜市旭区善部町 あらた動物病院 院長の小林 新です。
ブログの更新が久々になってしまって申し訳ありません。

今回は免疫介在性血小板減少症という病気の紹介をしたいと思います。
症例は2歳の女の子、トイプードルさんです。
元気がない、お腹が赤いという主訴で来院されました。来院時のお腹はこんな感じです。

お腹に小さな赤い斑点とその背景に青あざのようなものが確認できます。大した病変に見えないですが、実はこれがこわい病気が隠れているときの重要なサインなのです。

皮膚病と勘違いされたり、来院時まで気が付いておられないオーナー様が多いです。結論からいうとこれは皮下出血(紫斑)であり、出血傾向が認められるときの重要なサインなのです。

早急に血液検査を実施したところ、止血の際に必要な血小板数がほとんど認められませんでした。

血小板減少症は、様々な原因(ワクチン・薬物・寄生虫・腫瘍など)で発症するため全身の精密検査を実施しましたが、皮下出血以外の病変は認められなかったため、自己免疫疾患の1つである、免疫介在性血小板減少症(IMTP)と診断しました。

この子は、発見が早く皮下出血以外の他の出血傾向(鼻出血・消化管出血・血尿・頭蓋内出血など)が認めれなかったことからステロイドによる免疫抑制療法を開始し、1週間後には血小板数も回復し、症状も落ち着ていました。この後はステロイドを減量していく予定でしたが、治療の経過で免疫介在性の貧血が出てきたため、エバンス症候群と診断し追加治療を実施しました。エバンス症候群に関しては長くなってしまうので、別のブログで紹介したいと思います。

免疫介在性血小板減少症は、自己免疫疾患の1つです。自己免疫性疾患とは、本来自分のからだを守ってくれる免疫系が正常に機能しなくなり、自分のからだを攻撃してしまうこわい病気です。症状は、自己免疫疾患の種類および体の中で攻撃を受ける部位によって異なります。今回は、止血の時に重要な血小板に対して免疫が働いてしまい、血小板の数が減少し、出血傾向が認められたというわけです。

治療は、うまく働かなくなってしまった免疫を一時的に抑えてしまうことが重要で、ステロイドや免疫抑制剤を用いて免疫抑制治療を実施していきます。治療を開始しても、血小板数が増加してくるまでには1週間前後かかるのでその間に出血傾向により命を落としてしまうこともある病気です。

矢印で示したものが血小板です。治療前には、血小板が確認できないことがわかると思います。

この病気は、血小板数が著しく低下してしまうと出血傾向がでて、元気や食欲が低下してきますが、それまでは無症状なことが多く、健康診断などでもたまに見つかります。治療を開始してもすぐに出血傾向が改善するわけではないので、非常に早期発見・早期治療が重要な病気です。

これらの病気をより早期に発見するためにも、当院では定期的な健康診断をお勧めしております。また、今回のような症状が認められる場合は早めの受診をおすすめいたします。

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