症例紹介

症例紹介:皮膚糸状菌症

こんにちは。横浜市旭区善部町、あらた動物病院 院長の小林新です。
今回は皮膚糸状菌症という皮膚病の症例についてのお話しです。
皮膚糸状菌症は、ねこちゃんで時折遭遇する皮膚の感染症ですが、ねこちゃんとわんちゃんでそれぞれ遭遇したので、紹介したいと思います。

まずは、4ヵ月齢の保護猫ちゃんです。お家に入れる前に簡単な健康診断をしてほしいとの主訴で来院されました。
耳の先と鼻先に脱毛が認められ、痒みはないとのことでした。

特殊なライトをあてて、皮膚糸状菌がいないか確認しました。糸状菌の一部は、ライトを当てると蛍光色に発光します。

脱毛部位が発光しました。発光している部位の毛を抜いて糸状菌がいないか顕微鏡で確認しました。

糸状菌は毛に感染する、カビの仲間です。左が正常な毛で、右が感染を起こしている毛です。右の毛は表面に大量の粒のようなものが見えて毛の構造自体が壊れています。このように感染を起こすと、毛で増殖し、毛がぼろぼろになり切れやすくなってはげてしまいます。

治療には、抗真菌薬が必要で、飲み薬あるいは薬用シャンプーによる治療を実施します。このねこちゃんは性格的にシャンプーが難しそうとのことで、飲み薬により治療することになりました。

次は、皮膚にしこりができたとの主訴で来院された5歳のチワワさんです。
首の後ろに、1.5㎝径のしこりができており、表面は赤く腫れ、脱毛し、フケが出ていました。

炎症や腫瘍の可能性を考えて、針生検を実施しました。

炎症細胞に混ざって、紫色のつぶつぶが大量に取れてきています。これも糸状菌なのです。

表面の毛を抜いてみると、先ほどのねこちゃんと同様に糸状菌の増殖が認められました。

このわんちゃんも飲み薬で治療を開始しました。

皮膚糸状菌症は人にうつることもある人獣共通感染症で、人が感染すると赤いリング状の病変ができ、痒みを伴います。わんちゃん、ねこちゃんから感染することもあるので要注意です。
また、皮膚糸状菌症は治るまでに1~2か月を要する、治療期間の長い病気です。その間に、人や他の動物にうつらないように隔離や消毒、清掃が必要になるので、治療以外も大変な病気でもあります。

特に、飼い始めの子猫ちゃんで見つかりやすい病気ですので、痒みのない脱毛やフケが認められる場合はお早めにご相談ください。

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