こんにちは。横浜市旭区善部町のあらた動物病院、院長の小林 新です。
今回は、高齢のわんちゃんで多い、僧帽弁閉鎖不全症の症例を紹介したいと思います。
症例は、トイ・プードルさん。他院で血液検査時に興奮し、その後から咳が止まらない・眠れないくらい呼吸が苦しいとの主訴で来院されました。
この子は以前から咳が出ており、気管虚脱・僧帽弁閉鎖不全症を指摘されていたとのことでした。画像の検査で心拡大は認められなかったので、気管虚脱による咳ということで治療を続けられていたようでした。
そのまま入院し、利尿薬および強心薬を投与、ICUでの酸素管理を実施しました。
半日後には、症状も顕著に改善し、呼吸もかなり楽そうになりました。主訴であった、咳も軽減していました。
肺水腫は診断や治療が遅れてしまうと呼吸不全から死に至ることも多い病気です。今回は、飼い主様に早めに連れてきていただいたのでこの子を助けることができました。本当に良かったです。
現在も投薬による治療を継続し、肺水腫が再発することなく生活できています。今後も良い状態を維持できるように飼い主様と相談しながら治療を継続していきたいと考えております。
わんちゃんの僧帽弁閉鎖不全症は、老化に伴い心臓の弁が変性してくることによって起きると言われています。
僧帽弁は通常、薄いしなやかな膜のような構造ですが、老化に伴い分厚く、動きの悪いものになってきます。
このとき、弁が上手く働かなくなることで逆流が生じ、進行すると心拡大に発展します。
矢印で示しているのが僧帽弁です。この症例の僧帽弁は「粘液腫様変性」といって、通常よりも弁が分厚くなっています。
以下は、血流に色を付けた画像になります。黄色の血流が異常血流(僧帽弁閉鎖不全症に伴う逆流)になります。
心拡大がさらに進行すると、肺に水が溜まってしまう肺水腫という状態になってしまいます。
心拡大が認められた段階で投薬治療を始めれば、肺水腫になるまでの期間を延ばすことができると言われています。
来月からは、わんちゃんの健康診断キャンペーンが始まりますが、身体検査で心雑音を指摘された場合は心臓の検査を実施し、治療の必要性を判断することをお勧めします。