症例紹介

症例紹介:猫の消化器型リンパ腫

こんにちは。横浜市旭区善部町のあらた動物病院 院長の小林 新です。

今回は、猫の小腸腫瘍で一番発生率が高い『消化器型リンパ腫』であった、12歳の日本猫の男の子を紹介したいと思います。

他院で、健康診断を実施した時に貧血があると指摘されたとのことでした。その精査を希望され当院を受診されました。

来院時、口の粘膜も白っぽく、元気もありませんでした。嘔吐や下痢が認められ食欲も落ち、痩せてきたとのことでした。

触診で、お腹の中に卵ぐらいの大きさの塊が触れましたので、画像検査を実施しました。

レントゲンと超音波検査で、小腸に複数の腫瘤が認められ、腎臓への浸潤もありそうでした。

レントゲンでもお腹の中にしこりが認められました。
1つ目の病変になります。しこりの中にガスと食べ物が認められ、しこりが小腸であると考えました。
2つ目の病変になります。レントゲンで確認された5㎝大のしこりです。
小腸壁の顕著な肥厚が認められました。
左の腎臓にも、腫瘍の浸潤が認められました。

即日、針生検を実施しました。

細胞診では、大型のリンパ球が主体に取れてきており、消化器型高悪性度リンパ腫と診断しました。

黒色便が出ており、貧血は、小腸腫瘍からの消化管出血により起きていると考えられました。

貧血を解決するために、リンパ腫の治療が必要であると考えました。治療の選択肢として、

①外科手術+抗がん剤:腫瘤を取り除き、術後に抗がん剤治療を開始する

②抗がん剤治療

腫瘤が複数あること、腎臓への浸潤、貧血もあり、状態があまり良くなかったことを考慮し、オーナー様と相談した結果②抗がん剤治療(多剤併用)で治療することになりました。

この治療は、決まったプロトコールに沿って複数の抗がん剤を投与していくと言うものです。

はじめの2か月は毎週抗がん剤を投与するのですが、治療に劇的に反応してくれ、食欲や元気も出てきました。体重も増え、大きな副作用もなく、飼い主様にも非常に喜んでいただきました。

その後、貧血も改善し、病変はなくなりました(CR:完全寛解)。

腎臓も悪いので、使用できる薬の種類に限りはありますが、現在も治療が継続できています。

そろそろ、治療開始から4ヵ月になります。完治させることは難しい病気ですが、少しでも良い状態が長く続くように全力で治療にあたりたいと思います。

貧血やリンパ腫のことで、わからないことがありましたらいつでもご相談ください。

関連記事