症例紹介

症例紹介:水中毒

こんにちは。横浜市旭区善部町のあらた動物病院、院長の小林 新です。

ここ数日は猛暑日が続いています。暑い時期なのでついついお水をがぶ飲みしたくなってしまいますね。そんな時期だからこそ起こりえる、水中毒についてお話したいと思います。

今回は、紹介するのは2歳のボーダー・コリーさんです。プールで2時間ほど遊んでから様子がおかしいとのことで来院されました。来院時、ふらつき、意識レベルの低下、流涎などが認められました。

熱中症を疑いましたが、身体検査で発熱はなく、『ずっとプールの中に入っていたので高体温になった可能性も低いと思う。』とのことでした。

体重を測ってみたところ、数日前より1kg体重が増えていました。よくよく聞いてみると、『プールで遊んでいるときはよくプールの水を飲んでしまう。いつもは、プールの最中に何度も排尿するが、今日はプール中の排尿がなかった。』とのことでした。

血液検査と尿検査を実施させてもらったところある病気の可能性が高いと考えました。

水中毒です

水は生き物が生きていくうえで、絶対に必要なものです。しかし、あまりに急速に水を大量摂取してしまうと血液中のナトリウムが薄まってしまい低ナトリウム血症になってしまった結果、脳浮腫が起こってしまいます。

この子も、低ナトリウム血症を呈しており、他には明らかな原因がみつからなかったため、オーナー様からの情報と合わせて水中毒と診断し治療しました。

意識レベルの低下や流涎は明らかに神経症状であったので、脳浮腫を起こしていると判断し、脳浮腫をとるために利尿薬を投与しました。

利尿薬の投与後、神経症状はすぐに改善しました。その後は、ナトリウムの入っている点滴を実施することで低ナトリウム血症は改善し、来院の数時間後にはいつもの状態に戻ってくれました。

オーナー様がいち早く異変に気が付き、すぐに連れてきていただいたのでこの子を助けることができました。本当に良かったです。

水中毒は、急速に水を大量摂取してしまうことにより起こります。体に大量に水が吸収されることで、血液中のナトリウムが薄まってしまい低ナトリウム血症になってしまいます。その結果、脳浮腫がおこってしまい、ふらつきや意識障害、流涎、痙攣などの神経症状が起こってしまう、非常にこわい病気です。

普通の生活で水をそこまで大量摂取してしまう事は少ないのですが、長時間水遊びする場合は気を付けてください。遊んで興奮していると、気が付かないうちに大量のお水を飲んでしまっていることがあります。川やプールで遊ぶ際には遊ぶ時間が長時間になりすぎないように注意していただいた方が良さそうです。

また、水と一緒に塩分を与えることも水中毒の予防には有効です。目安は500mlの水に塩を一つまみです。他にも、ワンちゃん用の経口補水液などもありますのでおすすめです。

しばらく暑い日が続きますので、水遊びをする機会も多くなると思います。くれぐれも水中毒には気を付けてくださいね。

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