こんにちは。横浜市旭区善部町のあらた動物病院 院長の小林 新です。
今日は、エバンス症候群のお話をしたいと思います。
エバンス症候群とは、自己免疫性溶血性貧血(IMHA)と免疫介在性血小板減少症(IMTP)が同時に起きてしまう病態で、非常に予後が悪く、治療反応が乏しいと亡くなってしまう可能性が高い病気です。
前回紹介した免疫介在性血小板減少症(IMTP)の2歳のトイプードルの女の子の治療の過程で、このエバンス症候群を発症しました。
前回のブログはこちら
診断後、ステロイド治療にうまく反応してくれていたのですが、治療中に再び血小板数が低下し、貧血も認めらるようになりました。貧血の進行ははやく、輸血が必要な状況になってしまいました。
スタッフのわんちゃんからの供血を試みましたが、輸血前の検査で、血液が合わないことがわかり、その子からの輸血が困難な状況でした。当院の患者様に協力をお願いしたところ、快く引き受けていただき輸血を実施することができました。
それに加えて、他の免疫抑制剤やガンマグロブリン製剤投与したところ、貧血と血小板減少症の進行がおさまり、徐々に数値の改善が認められました。
現在は、正常値まで改善しましたので、ステロイドを漸減中です。
エバンス症候群は、とても珍しい病気で、私自身もはじめて遭遇しました。この病気は自己免疫性溶血性貧血(IMHA)あるいは免疫介在性血小板減少症(IMTP)のどちらか片方の治療中に、発症しやすいと言われています。
血小板が減少し、出血しやすいにも関わらず、進行性の貧血まで起こしてしまう非常に厄介な病態で、治療が難しかったです。
飼い主様とともに最後まで諦めずに治療できたことで、何とか助けることができました。再診で元気そうな様子を見ていると本当にうれしいです。
また、輸血なしでは治療が困難であったため、供血してくれたわんちゃんと飼い主様には本当に感謝しかありません。本当にありがとうございました。
血液疾患でお困りごとがありましたら、是非ご相談ください。